A社が後任のKさんに正式な内定通知を送った後になって、Cさんは転職先の悪い噂を聞きつけ、A社に残ると言いだしてしまった。またまた慌てたT課長、上司と人事に相談したが、すでにKさんは現職に辞表を出していたし、Cさんは内定先を断ってしまっていた。世間的に名の通ったA社が「内定取消しをした」と話が広まるのも好ましくない。結局、当分の間A社の経理でCさんとKさんの両名をあずかることになった。それまで通り、Cさんが中心になって財務会計をまとめ、Kさんがその補佐をするかたちだった。
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しかし、しょせん一人分の仕事に二人の社員、始めのうちはKさんは仕事にあぶれ、暇そうにしていることが多かった。A社としては、どちらかに辞めてもらう方が良いような状態だったのだが、T課長は自分の不手際の手前、二人が衝突しないか、KさんがA社に嫌気を見せていないかなどと、気を使う毎日を送っていた。だが、しばらくするとKさんとCさんはお互いの実力を認めあい、共に仕事の領域を拡大していった。KさんはCさんの決算業務を引き継ぎつつ、前の会社でのノウハウを加味して、業務の効率化を押し進めた。Cさんはグループ会社の業績分析や、経理システムリニューアルプロジェクトを立ち上げたりと、いよいよA社の中核として活躍するようになっていった。KさんがA社に馴染み、二人の仲がうまくいったことでT課長は胸をなで下ろしていたが、三ヵ月後の人事異動でCさんは課長代理に、Kさんは主任にそれぞれ昇進。そしてT課長は……A社の経理課にこれ以上のスタッフは必要ないと、経理をハズされグループ会社への出向が決まった。